
| 第2回 母の自費出版 |
実は、本を造る、という点においては、母は僕の先輩である。
昭和の終わりに『綏芬河の少女』(すいふんがのしょうじょ・所洋子著 昭和63年4月10日発行。製作・崙書房出版株式会社)という本を自費で出版している。母が幼少を過ごした満州での出来事を記した小さな本である。今回は、この本について少し書いてみたい。きっと、母も喜んでくれると思う。

昭和63年というと、もう15年以上前だ。
総頁数が150頁ほどの小さな本だけれど、母にとっては大きな意味を持ったと思う。
母の父は(つまり、僕のおじいちゃんになる訳だけれど)軍人だった。おじいちゃんは単身中国に渡り(当時は日本が満州と呼んでいた訳だけれど)各地に軍事基地を造る仕事をしていたらしい。隊長として重責を果たしていたが、根は文学でもやりたい、という男だったらしい。しばらく満州各地での仕事が続くことになり、内地(つまり日本だけれど)に残っていた家族が呼び寄せられた。
そして、母は家族とともに中国に渡ることになる。小学5、6年生の頃だった。最も多感だったであろう母の目から見た異国の地。その風景、人々、風俗、が生き生きと描かれている。そんな本である。
当時母が市民文学講座などでお世話になっていた 伊藤晃先生から序文をいただき、息子のぼくは、「母の満州」という一文を末尾に載せてもらった。(実は、この表紙の絵もぼくが描いた。ほとんど想像画だけれど)
当時、続編を書きたい、といっていた母だけれど、果たせぬまま現在に至っている。
第3回 本を読む(その1) へつづく