第5回 本を読む その2


 イラストレーターであり、デザイナー、映画監督としても活躍している和田誠さんの本『装丁物語』を読みました。彼は、装丁家としてもたくさんの仕事をしているんですね。何気なく読み始めた本ですが、著者の経験が縦横に語られ(編集者がインタビューしたものを加筆訂正して成立したものなんですね)、含蓄がある本でした。
 この本を読んでいると、装丁家が本を造る楽しみをどのようなところから得ているのか、伝わってきます。和田さんの場合、良い装丁は一にも二にも、中味をよく読むところから始まります。
 中味を良く読み、それと呼応する形で装丁することに一番気を使っている。アイデアは、本の中味といかに呼応するか、というところで最大限に使われる。それでこそ、装丁のアイデアは生きる、と考えておられるようにみえる。

 巻末で、バーコード表示に真摯に怒る著者の姿勢が、昔のがんこな職人をも思わせて痛快。しかし、これは和田さんが孤軍奮闘すればすむ問題ではなく、みんなで知恵を出し合うべき課題と思う。

 南伸坊という人は面白いな、と思っていましたが、本業(?)が装丁家であった、というのは知りませんでした。しかし、この本を読むと実にたくさん仕事をされている。本人は謙遜して、装丁家なんておこがましい、馬丁、園丁と同じに装丁というくらいが丁度良い、と言うのですが。
 南さんの装丁の特徴は、笑いの取れる装丁というコンセプトにあるみたいです。全部とはもちろん言いませんが、独特のアイデアで笑えるものが多い。本人もそれが好きなのです。和田さんにも共通しますが、自分で絵が描けてしまうところも強みです。二人とも実に味のある絵をお描きなる。うらやましいです。

 また、そういう南さんの特徴が知られてくると、次々とそういう依頼が増えてくる。時には著者から直接指名もかかる。これは嬉しいそうです。ひときわ気合いが入る。その分できあがりも心配なり、売り上げが自分の装丁のせいで落ちることのないようにと祈る気持ちにもなるらしい。

 南さんの装丁はある意味シンプルなものが多い。
 『新解さんの謎』(新明解国語辞典についての本)の表紙に使い古しの新明解国語辞典の写真をそのままつかったり、『常識論』と言う本表紙は単なる豆腐だったりする。古本についての本である『古本屋月の輪書林』の表紙には、古本には、本屋さんによっては、オビ紙というものがついていて、直ちに古本と分かる印にもなっているのだが、南さんは装丁デザインとして新刊本にこのオビがついているデザインをしたわけだった装丁/南伸坊。文字を拡大してそのまま、あるいはちょっと工夫して使う、と言う手もよく使われるみたいです。『老人力』の場合は真っ赤な表紙に大きく老人力というタイトルと著者名。文字の下の帯には「?」マークのみ。赤は老人のちゃんちゃんこ赤のイメージらしい。やはり、真っ赤な表紙にタイトルが「嘘ばっかり」(これは“真っ赤な嘘”ですね)、というのもありました。

 

 第3回文学フリマ へつづく。


 

 

Saturn's Ring
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