2005年11月に発行したエッセイ集『dozeu.net雑想ブック』のコンテンツを
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 栞1 
  デバ地下---食べ物のワンダーランド


 今日、池袋に行きました。帰り際にちょっと書店に寄ろうと思い、地下街を歩いていると西武百貨店の食品売り場を通り抜けることになり、なんだかめまいがするような気持ちになりました。
 僕は、全くグルメとはほど遠い日常(食)生活を送っているためか、人でいっぱいのその食品売り場を通り抜ける内に目に飛び込んでくる様々な食品たちが、なんだかそれぞれ本当においしそうに見えたのです。そして不景気のためか、価格設定はかなり押さえられている。洋食から中華、日本食、イタリアン……なんでもござれ。
 確かに、日本は豊かなんだ、と妙な納得の仕方が訪れました。だって、食品というきわめて限定的な世界の中でのことだろうけれど、人間が生きていくうちの欠かせないものが、これだけ豊かに、しかも毎日毎日消費されているのだから……。
 でも、何か腑に落ちないものが残るのも確かなのです。僕は、書店で河合隼雄の新刊を買い込んだ帰り道、またその食品売り場を通り抜け、ビビンバ丼のお弁当を買って帰りました。ついさっき、レンジで温めて食べたけれど、おいしかった。
 実際、おいしかったなぁ。
 まいった。まいった。
 でも、本当に美味しいものって、他にあるはずなんだよね。
     (2003.7.27 初出「関心空間」)

  Village Vanguard


 回想から入ろう。
 ワタシは、チバ県のとある場所で暮らしている。マイ・カーなどとは縁のないワタシは、少し遠出するときには自転車に乗る。ワタシはエコロジカルな人間なのである(なんてウソはいけませんね)。
 もう五年ほど前のことである。その日もワタシはマイ・バイシクルを転がしていた。そこは最寄り駅から何キロも離れた住宅と工場などが点在する何の特徴もない道であった。引っ越して間がなかったワタシは、時折、気まぐれを起こしては、用もないのに自転車で遠乗りと洒落込んだりしていたのであった。
 ふと、道路脇を見ると、倉庫としか思えない黒い建物の側面に大きく「本」の文字がある。
 なに、本? ……なんのことだ?
 ワタシは、少なからず混乱した。繰り返すが、そこは繁華街でも何でもない。人通りすら少ない。ほこりっぽい田舎道でしかなかったのだ。
 半信半疑で、しかし好奇心に負け、自転車を降りたワタシは、入り口らしき扉の前でしばしためらったのち、ドアを開けた。
 驚いた。
 倉庫の中に、所狭しと様々な雑貨・本・CD・衣類……エトセトラが並び、立てかけられ、吊され、ていたのである。
 なんだ、これは?
 なんで、こんなものが?
 ここは、いったいなんだ?
 ワタシはしばし疑問の固まりとなりつつ、目はせわしなく辺りを彷徨い、喜びの声を上げつつ、脚はふらふらとよろめくように身体を運んで、棚の前でしばし時間を忘れたのであった。
 これが、ワタシとヴィレッジ・ヴァンガードとのファースト・コンタクトであった。
 ヴィレッジ・ヴァンガードは新刊本を扱う本屋ではなく、定番本を扱う本屋(というか、正確には本屋と限定してしまうことはできない。本/雑貨屋)だ。本について言えば、決して豊富な棚とは言えないが、なかなか品揃えが良く、センスが感じられた。そう思うのも道理で、自分の蔵書と似た傾向が感じられたのである。従って、ヴィレッジ・ヴァンガードでは案外本は買わないことが多い、という変な現象にも結びつくのだが。
 この店は、その出会いから一年も経たない内に、唐突に移転のお知らせが張り出され、沿線のとある駅前のビルに収納されることで終わりを見た。その移転先の店も100 Yen shopに取って変わられてしまった。
 今考えてみても、何故あんな場所に? と不思議な気がする。あの倉庫を思い出すと、アレがヴィレッジ・ヴァンガードの本来の姿であったのでは? などという夢想すら浮かぶ。
 結構好きだったんだ、あの店、と今思う。
 ヴィレッジ・ヴァンガードが、実は全国展開しているということは、割に最近知った。
 そして、最近発見した。お茶の水にもあったのだ。ワタシはなんとなく、ウレシイのだった。(2003.6.5 「関心空間」)


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2007-07-01
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