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レコード盤のような土星の環から響く、かすかな音に、耳を傾けたい。
それがどんなに遠いとしても。手を伸ばしても届かないとしても。
ところで、人生の折り返し地点、と言うものがあったのだとしたら、ぼくの場合はいつだったのだろう? それがいつだったにせよ、ぼくが今、人生を往路と復路に分けるならば復路にいることだけは間違いない。いずれそう遠くはない時期に、生まれる前にいた場所に、このぼくも帰っていくのだ。
だとしたらそこには自ずと、「復路の哲学」とでも言うべきものが要請されるのかも知れない。
しかし、往路の哲学だって持てなかったぼくだもの、そんなものを持てるのかどうかは甚だ危うい。まぁ、仕方がないですよね。できる限りのことをして生きていくしかない。
「土星の環」の盤面上で奏でられる小さな響きに、しばし耳を澄ませてください。
2021年2月 所 英明